LOST CRESTS 〜roots of this world〜

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第三楽章〜祈りのうた〜

巫女たちが旅に出たあたりから、司祭たちが奏でる祭典の音楽はそれまでとは異なり、瞬間に没頭するかのような装いを持つ空気へと変わっていた。

それまで民たちが信じていた平和がもしかしたらここで終わってしまうのではないか?
私達にできることは、その紋章への祈りを舞いに込めて捧げることではないか?

焦燥感、願望、無力、拒絶。そうした紋章が失われた現実への想いを、それまでが行ってきたような互いを支えあう想いで打ち消すように、彼らは舞いを捧げ続けていた。


巫女たちが手がかりを見つけ再び紋章を探し始めたその頃、祭典の会場では、司祭が残された「創造の紋章」の前でその世界の調和が続くことを祈る唄を歌い始めた。

司祭が祈り、唄う姿は不安に包まれた民たちの空気にひと時の安らぎと共に、希望を湧き上がらせる力を与えてくれる。そして司祭の祈りに呼応するように民たちは司祭と共に、紋章が彼らのもとへと戻り、平和がこれからも続いていくことを祈りながら歌う。

そのひと時の平和に少しばかりの幸福を感じる者もいれば、いつまで続くか分からないこの瞬間への感謝と共に涙するものもいた。だが、いずれもこの司祭の胸をしめつけるような歌声にただただ寄り添うように、この瞬間の愛を感じ取っていた。

司祭が歌いながら見つめる空は、司祭と民たちの願いを照らすかのようなバニラ色がにじむまぶしい西日から、徐々に祈る民たちを包み込むような柔らかな夕暮れへと変わろうとしていた。

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