LOST CRESTS 〜roots of this world〜

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第二楽章〜失われた紋章〜

人々が高揚感に身を任せ、祭典の時を今か今かと胸を膨らませている時、慌てて民衆の一人がまるで幽霊でも見たかのような青ざめた顔で会場に駆けて来た。

「どうしたのです、フェーン。」

「それが、エレーナ様! 紋章が・・・・紋章が・・・消えているのです!!」

フェーンは、いよいよ祭典のために紋章を会場に運ぶ儀式を行うため、奉納の間への重い扉を開けたところ、2つの紋章の一つが消えていること見つけたという。

彼が言うには、ピピの紋章がその場から失われているという。
人々からはそれまでの高揚感がウソのように失われていき、一転、不安な空気が辺りを支配し始めるのを感じた演奏家達の音楽は次第に闇の要素を増していく。

そうした中、紋章を運ぶ巫女の一人であるミーニャが力強い言葉で民衆に訴えかけた。

「フェーン、そしてみなさん、心配することはありません!
 私たちが必ずピピの紋章を見つけてきましょう。
 みなさんは紋章が取り戻されることを祈って、音楽に身を委ねるのです。その想いがピピの紋章へ伝わる時、必ずやみなさん再びピピの紋章とエングゥの紋章を目にすることができるでしょう。」

そしてそのまま、ミーニャ、エレーナ、ウーパ、3人の巫女たちが紋章を見つけるために、祭典の会場をあとに旅に出ていった。


旅に出た巫女たちは、周辺の今は使われていない建物や洞窟、草原を探しはじめた。

廃墟となったかつての神殿は、今も神聖な空気を醸し出している。そして、その周囲には荒々しく水が流れる滝と川が広がり、かつての祭典には紋章への尊厳と畏敬の念が根底に強くあったことを伺わせていた。

かつては、より強い紋章の威厳とそれに対する執着が祭典を支配していたのだろう。
平和への願いを高揚感により表現する現在の祭典は、徐々に時代と共にこうしたかつての意味合いが薄れていくことによって成り立っていったことを、巫女たちは理解しはじめていた。

だが、その周辺で紋章は見つかることはなかった。

そして、徐々に遠くへと探しに出て行くうちに一人の少女と出会った。少女は紋章を探す巫女たちに手がかりを与えてくれた。

「あのね、さっき見た事ない服を着たおねえちゃんが、すごく暗い顔をして走っていたの見たんだよ。あっちの方に・・・」

そういって、少女は巫女たちの町から南を向いた方向を指差した。

「あ、あとね、さっき別の人にも会ったときにそんなことを聞いてたよ?もしかしておねえちゃんたちのおともだち?」

「紋章」を探しに出たのは私たちだけではない、ということ?
一体、「別の人」とは誰のことだろう・・・?

彼女たちは、これまで感じたことのない不安が湧き上がるのを感じていた。

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