LOST CRESTS 〜roots of this world〜

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第一楽章 〜ルーツ〜


かつて地図にも載っていない、私たちの世界の日常では知られていない世界があった。
創造と愛情が共に共存し、出会う音楽、芸術、そして人との交流に酔いしれ、踊り、そして笑う世界。


外界から遮断されたその世界の人々は、複雑な模様のようにドレープが折り重なる少し赤味を帯びた
白いドレスを身にまとい、 祭典の際は正装となる背の高い帽子を身に着けていた。

その世界の秩序を長らく守ってきたのは、ピピと呼ばれる鳥を祀った愛情の紋章、エングゥと呼ばれる鳥を祀った創造の紋章、2つの紋章の共鳴によるものだった。
長らくこの世界の平和がもたらされていると代々伝えられてきている象徴となる存在であり、そのため、2つの紋章は演奏家と司祭によって神聖なる儀式によって崇められ、人々は世界に溢れる音と芸術に祈りつつ過ごしてきた。

私たちにとっては非日常とも思えるこの世界では、年に一度、2つの紋章をすべての民に示し、永遠に続く平和を祈る祭典が行われてきた。

この物語は、見上げると広がる空、そしてすぐそばに広がる海を舞台にした祭典の午後から始まる。

既に祭典を待ちきれない人々は、演奏家たちが奏でるさまざまな音楽に包まれていた。
この祭典の一日、音楽は、紋章とそれらがもたらす平和への祈りを民衆に促す役割を担うことから、
その祭典の終焉まで止まることはない。
それがこの世界での慣習となっていた。
その周囲では芸術家たちが平和への願いを表現する作品が民衆の感性に訴えかけている。

祭典の目的となる紋章の公開が行われる夜を前に、
祭壇の前に集まった民衆たちは早くも最初の高揚を迎えんとしていたところだった。

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